信念

「師匠、師匠」

「なんだ?」

「師匠って友達います?」

「いるぞ。二人くらい。」

  ええええええええ!!皆さん聞きました!?

「し、ししし師匠にと、とと友達がいたなんて!!!!」

「驚きすぎだろ!!」

  ビシッ

   いったー!?あー頭ヒリヒリする。

「だって、常に一人を好む師匠が……

    あの群れたら負けとか言ってた師匠が……。」

「俺をお前の空想で寂しヤツみたいにするな!!」

「はぁーなんか裏切られた気分です。」

「ん?お前はダチいねぇの?」

「ええ。もちろんいません。0人です。」

 

「なんかごめんな……。」

「謝らないでください。寂しヤツみたいじゃないですか!!!」

「そうだろ」

「違います!!私には師匠がいますから寂しくありません。」

「お前はダチじゃねぇよ。」

「知ってます。師匠は私の婚約者でー」

「いつ俺たちは結婚したんだ!!」

「それはあの熱い夜にー」

できちゃった婚!?ワタナベま◯とか!?」

「いえ、木村◯哉です。」

「同じじゃねぇーか!!」

「いえ、キムタクの方がタイプです。」

「しらねぇーよ!!」

 

「あ……あの師匠はどんな女がタイプですか?」

「ん……胸のでけぇ女」

「それは人間でしょ!!……そうじゃなくて、

   どんな性格のネコが魅力的にみえますか?」

「俺は別に外見だけでも、性格だけでも好きか嫌いか判断しねぇよ。

   ただ、自分の信念や流儀を貫いて生きてるヤツってのは

   たとえ、特出した武器やスキルがなくても自然と、人が集まってくるし、

   好かれるってもんさ。俺は野良になってなげぇからいろんなヤツを見てきたが、

   やっぱ誰にでも曲げられない。死んでも曲げねぇくらいの意思を感じる

   ヤツには多くの人が陰でそいつを支えていた。

   誰かが 一生懸命なにかをしようとするのを見ると、助けたくなる奴らが集まってくる。

   それが本能ってやつさ。」

「そうですね……。」

「ルフナはどうなんだ。自分の信念をもって生きているか?」

  めずらしく師匠は私の名前をよんだ。

  ……”信念”か。考えたこともなかった。

「私は……」

「べつに無理に決める必要はねぇよ。

  むしろ信念なんてもって暮らしてる方が異常だ。

  まあ、だからこそ魅力的なのかもな。

  だがな、俺たち猫は人間みたく長生きできねぇ。だからこそ、少ない時間でできることなんて

  限られてくるんだ。ようは、大っきい夢や目標をたてるんなら、若けぇうちに決めときな。

  信念なんて決めるのはそのあとでいい。」

 

  師匠は普段だらしないくせに、たまに感慨深いことを言う。

「分かりました…師匠。私、ビックで大っきな猫になってみせます。」

「これ以上太る気か!?」

「身体の話じゃありません!!精神的な話です!!」

「おお。そうか、そうか、まぁがんばれがんばれ!!」

  あたまわしゃわしゃされた。

  ちょっと気持ちいい。

 

 

 

 

   

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

不快

飢えた獣は地を這う。


脳で発せられた麻薬物質が脳をハイジャックし、侵す。
侵された脳みそは理性の多寡が外れ、衝動を抑えられない。
「ガゥゥゥゥ──」
獣は咆哮する。
彼は痛覚と快楽に溺れ、苦しみ狂う。
ぐるぐるとした環状線が脳裏にちらつき、パチパチと音をたて、
アメーバのように踊り出した。


辺り一帯を粉々にしても、彼は止まらない。
彼はまだ暴れ足りないから。
交尾でメスを犯すような快感が全身にいきわたり、飢えた獣は
熱くなった生殖器を地面に擦り付ける。
周囲から見れば、いかがわしい行動も彼の頭では知る由もない。

メスのことしか考えられない身体で、全身を針で刺すような苦痛が、癖になり出したころ。
生殖器からは赤黒い液体がどろどろと流れ出た。
彼は、何度も、何度も、何度も、
地面に身体を擦り付けた。
それでも、狂人とかした獣が理性をとりもどすことはない。
身体にヒリヒリする感覚が新たに加わり、
脳がさらに興奮しだす。

傷だらけの背中をまるめ、獣は標的を見つけた。
彼は、通りすがりの人間に凄まじい速度で追いかけ、鋭利な犬歯でおもいっきり噛み砕く。
ぐしゃりというトマトを潰したような音が響きわたり、
彼はようやく目が醒める。

彼は今のうちに死ぬことを決断した。
前方にある直径1メートルくらいある岩に向かい、走り出す。
彼はその岩に頭蓋骨を砕くように、何度もぶつかる。

夕日が沈み、暗闇が空を包み込むころ、
彼は永遠の眠りについた。

chapter.4 曖昧な言葉

目が覚めると私は……身体が縮んでいた!!??
なんていえるくらい気絶慣れしてきたわ。
いや、慣れちゃいけない気がするのだけど。
「ごめんね、ルフナ。
わたしが強くにぎりしめちゃったせいで……」
いや、いや大丈夫。慣れてますから。
だから、ご主人もそんな顔しないで……。
私はご主人を慰めるためにご主人の膝下に寄り添う。
「ニャーーー」
すりすり
んーー
足すべすべ。
将来はモデルさんかな?
なんつってーー
「…ルフナ。ありがと 」
涙目になりながら、はにかみ笑いをうかべるご主人の姿は、不思議と儚く見えた。
でも、
あまりこれ以上DV夫みたくなってほしくないから。
気をつけてね。

ご主人は私の頭をそっと撫でて、しばらくするとどこかに行ってしまった。
あとをついてみると、頭には黄色い帽子。背中には、赤いカバンのようなものを背負って
いるご主人の姿が玄関で見えた。

どこかに行くのだろうか?
私はなんとなくご主人がどこか遠くに行ってしまう気がした。
「ニャーーー」
「大丈夫よ。ルフナすぐ帰ってくるから。」
そう言い残すと、ご主人は扉を閉め、外に出た。


2時間後

……暇だ。
何かすることはないか。
引きこもりって退屈だーー。
すぐ帰ってくるって嘘じゃん。

沖縄出身は時間にルーズって聞いたことあるけど、もしかしてご主人琉球生まれ?
そもそも“すぐ”って曖昧だよな。
「2時間後には帰るから」とか
時間指定してくれたほうがこっちは助かるわけ。
あと、「日がおちるまでには帰るから」
とかさ。いやいや、「日がおちるまでには」って天候とか、季節によって時間帯変わるし、
明確に何時?っていう話ですよ。
時計がない時代じゃないんだから。



どうせ、あなたも私のこと見捨てるんでしょ。
どうせ、ほかの動物の子と浮気してるんでしょ。
ああーヤダヤダ。
最近は草食系男子だの。肉食系女子だの言われてるけど、
ご主人は結局、付き合えれば誰でもいいわけ?

日常

教室の窓辺の席から俺は外を見渡す。
学校はまるで刑務所みたい。一日の半分を人で埋め尽くされた校舎に閉じ込めて……
大人になったら、大抵のことは
忘れるのに、バカみたいに授業を受けさせられて、常に他者と比べる。目立ちすぎれば嫌われ,
普通を強要される。
そんな環境下で、「いじめはなくしましょう」とかいいつつ、裏では平然といじめが起きてる。
「 こんなクソみたい場所壊れちゃえばいいのにー 」
そんなことをボソッと呟く。
授業中の今、先生が黒板の前で授業をしている。
カッ、カッ、カッ、カッ──
先生はチョークで数式を書き始めた。
後ろでは生徒が紙になにかを書くと斜め前の人に渡した。
くだらな
どうせ、しょうもないことに違いがない。
こんな代わり映えのないクソみたいな場所俺が潰してやりたい。
カシャ
俺は席を立ち、生徒ならび、教師から一斉に注目を浴びる。
「先生、今から殺します。」
まずは隣の席の地味顔の I くんからー
ポケットに仕込んだナイフで l くんの首もと目掛け思いっきり振り下ろす。
プシャーーーー
l くんの血が辺りに広がる。
返り血をシャワーのように浴び、俺の白色の服は真っ赤に着色した。
「 はっはっはっはっはっ 」
俺は人を殺した。
人生で初めて──
脳内でアドレナリンが大量に分泌して、頭の中がハイになった。
楽しい。すごい。人から出る血はこんなにも温かいんだ。
もっと欲しい。楽しいの、今すごい幸せだから。

キャ────────────────!!!!
一斉に女子の悲鳴が共鳴し、教室内は恐怖と混乱でパニック状態。

「 Uくんいったいなにを? 」

外野がうるさいが、今は気分がいい。
むしろ、今まで俺のことをいじめてきた奴らが俺を恐れている姿が愉快で
より気分を高揚させた。
代わり映えのない毎日?
なんだ簡単なことだった。こうすればよかったんだ。
すぐに逃げ遅れている生徒を殺す。
──グサッ
ああ、気持ちいい。ナイフ越しに君の苦しみと体温が伝わってくる。

──次。
走って俺は残っている生徒を追いかける。
「 イヤ、まて、僕が悪かった。
おまえにそんなことするつもりなかったんだ。
無理やりYたちにやらされて 」
ふーん。無理やりねーー。
その割には随分と楽しそうに、俺にバケツで水をかけていたけど……。
「 べつに怒ってないよ 。ただ日常に飽きてしまっただけだから 」
そう。べつに俺がいじめられていたから、こんな騒動を起こしたわけじゃない。
代わり映えのないこの日々に疲れてしまったのだ。
俺が今まで抑えてていた。
なにもかもメチャクチャにしたい狂気じみた心も
制御するのに。
「 だからこれは俺の憂さ晴らしだから 」
怯えて脚に力が入らず立ち上がることもできない彼は、チワワみたいに見える。
下半身を見ると、ズボンはびしょ濡れ姿。
あら、あら、見た目どうりトイレでおしっこもできないのかしら。
先生──!!人間の姿を擬した雑種が学校にまぎれこんでいまーーす。
そんな犬っころには
お仕置きが必要だね。
俺の両腕で彼の喉元を強く締め付ける。
がっ、ぐ、ぐう──


いいね。いいね。君最高だよーー

ああ、楽しかった。




妄想から覚めた俺は首元に手を当てる。
そこには誰かに、強く締め付けられたようなあざがあった。

鬱夢

暑い日差しが眩しい。
汗を流しながら、ぬるくなったポカリスエットを飲む。
「暑い」
最高気温を続出し続ける夏の中旬。
私は、坂の上にいた。
「お、もうすぐAがくるなー」

私のとなりで話すUくんは汗をぬぐいながら坂を走るAくんを見る。
私たちはバスケ部で今、絶賛部活中!!練習メニューのひとつで坂の上を走っているのだ。
私は、さっき走り終わり今は休憩中。
なんで、体力づくりってこんなにスパルタなんだろう?
うちの部活は私の通っているM中学校の中でキツさランキングワースト1〜2位を争うほどつらい。
私は常日ごろから顧問のNを憎み、メニューをこなしている。
そんなことを思いふけっていると、Aくんがようやくここまでたどり着いた。
「ナイスファイト!! 」
坂の上を走りきったAくんに賞賛の声がかかる。
まあこれもいわされてるんですけどね。
この前なんか先生にあいさつしなかっただけで、
気を悪くしてたし、ほんとめんどくさいことこのうえない。

周囲の目線が一気に私に向く。不思議とみんな眼光がするどい。
ん?私なんかいった?
すると──
急に目の前にいるAくんが私の首を締め出した。
く、くるしい────!!!!
Aくんの力強い両手で私の首は締められ、呼吸ができない。
な、なんで────!!!
先生──!!!
先生は私のことを鬼の形相でみている。
し、死ぬ──
い、いや死にたくない。
いつも死にたいっていってるけど死にたくない!!
くるしい、つらい、こんなの……いや!!!!
とたんに私は抗う。私の首を締めているAくんの両手を掴みはなそうとする──

──瞬間。
私は目を覚ました。
私は夢をみていたようだ。
あれが夢?
昔の知人に首を締められるってどんな夢だよ。
ああ──そうか、
私はずっと死にたいと思っていた。
だから、それが夢に出たのか。
おそらく、首を締められているとき、無呼吸になっていただろう。
もし、私があのときAくんの手を離そうとしなければ、
わたしは……死ねていたかもしれない。




──今日も死にそこねた。
私の首には、赤い手形がこびりついていた。