晴天下

「 先輩、デートしましょう 」

「 嫌だ 」

「 なんでですか!!! 」

「 めんどくさい 」

「 それは、こんな暑い晴天下のなか、“わざわざ外に出て遊びたくない” という
ひきこもり的な発想による発言。
そういう解釈でいいですか 」

「 正確には、晴天下のなか、さらに暑苦しい奴と外に出て俺が気づかれしたくないという意味だ 」

「 ……じゃあだれとならいいんですか 」

「 ーーナスチャ・クマロヴァ 」

「 ふ〜ん。先輩はアルビノが好きなんですかーー。
でも 無理ですね先輩には高嶺の花すぎます。
もうすこし現実をみたほうがいいと思います 」

「 いやーーアルビノは日に弱いらしいから、俺と気が合う。アルビノだったら、おまえとちがって
こんな悪天候の日にデートに誘ったりはしないだろう 」

「 むーー。だったらいつだったらいいんですか 」

「 え っ 」

「 だから いつだったら、先輩はデートしてくれるんですか 」

「 えーーっと秋? 」

「 季節またいでるじゃないですか!!! 」

「 それよりどうして俺なんだ?おまえならもっといい男と付き合えんだろ 」

「 だから ……先輩のことがすきだからですよ 」

「 ……それがわからない。おまえは俺みたいな人間のどこを好きになるの?
俺は自分のことをすごく醜いとおもっている。容姿はとくべついいわけじゃないし、
頭がいいわけでもない。他人よりも不器用で、いつも周囲から浮いた存在。
それが俺だ。それ以上、以下でもない 」

「 ……先輩。たしかに先輩はだらしないです。いつも身だしなみに気を遣わないし、
テストでは毎回赤点ギリギリでけっしていい頭ともいえないでしょう 」

「 ……ああ 」

「 おまけにコミ症で人と話すのも苦手。いつも他人に話しかけられたとき、
いかに早く会話を終わらせるかを考える。
むしろ、先輩のいうだめなところなんて、数えればきりがありません 」

「 その通りだ 」

「でも、身だしなみに気を遣わないのは、声をかけられないようにするため。
先輩は、普段は清潔感とか気にします 」

「 ちがっ!!ーー 」

「 いつもテストは自分なりに頑張って勉強しています。テスト前日は夜おそくまで起きて、
問題を解きます 」

「 なんで しってーー 」

「 先輩が人と距離を置いているのは、傷つけるのが怖いから。自分のふとしたことで
今まで仲良くしていた人がいなくなってほしくないから 」

「 俺はーー 」

「 先輩は、他人に自分を見せようとようとしない。だから、わるいところだけ目立っちゃって
孤立する。
……でも周りから距離を置いて、だれともかかわろうとしない先輩に興味をもつ人もいるんですよ。
最初はふとした好奇心。でも、しだいにあなたを見ているうちに気づいたんです。
あなたはわたしのむかしの自分だって。
わたしはむかし、内気でした。だれかと会うたびお母さんの後ろに隠れるような人見知りでした。
しかし、それではひとりになってしまいました。私は人見知りでも、ひとりになるのは嫌だった。
幼いころのわたしは自分の力だけでなにもできなかったから。
だから、頑張った。今まで話しかけられて、返すだけだったけど、自分から話しかけにいった。
そしたら、いつの間にかこうなっていた 」

「 結局、なにがいいたいの?俺はむかしのわたしみたいだからかわってほしいってこと? 」

「 はじめはそう思っていました。でも先輩はむかしのわたしにはない強さをもっていた。
ひとりで生きる強さを。たしかに不器用で他人より劣っていることも多いかもしれない。
それでも、先輩はひとりでやる。だれかに救いを求めず、おのれのちからのみで…… 」

「 そのことに気づいたとき、私は先輩をすきになっていた。私がむかし切り捨てたものを
もって生きている強い人に憧れたんです。あのとき、わたしは孤独からにげた。
でも、きっとわたしのなりたい人物像は孤独を乗り越えた先にある
ーー先輩みたいな人ーーだったんです 」

「………… 」

「でも、ひとりでなんでもこなせるわけじゃありません。いつか孤独がつらいと感じることも
あると思います。
だから、そのときにわたしは先輩に真っ先に頼られたい。ちからを貸したい。
いつも先輩がつらいときに、側で支えてあげたい。元気づけてあげたい。
もし、どうしようもなくつらいことがあったら、わたしが抱きしめて全力で癒してあげたい。
もし、悩んでいることがあったら、わたしが一緒に悩んであげたい。
楽しいことがあったら先輩といっしょに共有したい 」

「 ーーどうして……そこまで 」

「 だって、わたしは……先輩のことがすきだから 」

「 俺みたいな人でも? 」

「 先輩だからいいんです 」

「 俺はおまえの思っているような人じゃないかもしれないぞ 」

「 1年間あなたをみてきたわたしがいうんだから大丈夫です 」

「 ーー (ヒロインの名前) 」

「 はい 」

「 俺は、あいかわらず人と関わりたくない。傷つけるのも、傷つくのも嫌だ 」

「 はい 」

「 これからも俺は変わらずひとりでいることも多いと思う 」

「 わかってます 」

「 それでも、つらいとき、怖いとき、苦しいとき、そばにだれもいないのはつらい。

ーーだから、おまえみたいなやつがひとりくらいそばにいてもいいと思う 」

「ーー先輩!!!! 」

「 ちょーー苦しい!!急に抱きつくな、うざったい 」

「 うざいなら離れればいいじゃないですか。先輩! 」

「 ううーーーーーーーーーーーーーー!! !! 」