晴天下

「 先輩、デートしましょう 」

「 嫌だ 」

「 なんでですか!!! 」

「 めんどくさい 」

「 それは、こんな暑い晴天下のなか、“わざわざ外に出て遊びたくない” という
ひきこもり的な発想による発言。
そういう解釈でいいですか 」

「 正確には、晴天下のなか、さらに暑苦しい奴と外に出て俺が気づかれしたくないという意味だ 」

「 ……じゃあだれとならいいんですか 」

「 ーーナスチャ・クマロヴァ 」

「 ふ〜ん。先輩はアルビノが好きなんですかーー。
でも 無理ですね先輩には高嶺の花すぎます。
もうすこし現実をみたほうがいいと思います 」

「 いやーーアルビノは日に弱いらしいから、俺と気が合う。アルビノだったら、おまえとちがって
こんな悪天候の日にデートに誘ったりはしないだろう 」

「 むーー。だったらいつだったらいいんですか 」

「 え っ 」

「 だから いつだったら、先輩はデートしてくれるんですか 」

「 えーーっと秋? 」

「 季節またいでるじゃないですか!!! 」

「 それよりどうして俺なんだ?おまえならもっといい男と付き合えんだろ 」

「 だから ……先輩のことがすきだからですよ 」

「 ……それがわからない。おまえは俺みたいな人間のどこを好きになるの?
俺は自分のことをすごく醜いとおもっている。容姿はとくべついいわけじゃないし、
頭がいいわけでもない。他人よりも不器用で、いつも周囲から浮いた存在。
それが俺だ。それ以上、以下でもない 」

「 ……先輩。たしかに先輩はだらしないです。いつも身だしなみに気を遣わないし、
テストでは毎回赤点ギリギリでけっしていい頭ともいえないでしょう 」

「 ……ああ 」

「 おまけにコミ症で人と話すのも苦手。いつも他人に話しかけられたとき、
いかに早く会話を終わらせるかを考える。
むしろ、先輩のいうだめなところなんて、数えればきりがありません 」

「 その通りだ 」

「でも、身だしなみに気を遣わないのは、声をかけられないようにするため。
先輩は、普段は清潔感とか気にします 」

「 ちがっ!!ーー 」

「 いつもテストは自分なりに頑張って勉強しています。テスト前日は夜おそくまで起きて、
問題を解きます 」

「 なんで しってーー 」

「 先輩が人と距離を置いているのは、傷つけるのが怖いから。自分のふとしたことで
今まで仲良くしていた人がいなくなってほしくないから 」

「 俺はーー 」

「 先輩は、他人に自分を見せようとようとしない。だから、わるいところだけ目立っちゃって
孤立する。
……でも周りから距離を置いて、だれともかかわろうとしない先輩に興味をもつ人もいるんですよ。
最初はふとした好奇心。でも、しだいにあなたを見ているうちに気づいたんです。
あなたはわたしのむかしの自分だって。
わたしはむかし、内気でした。だれかと会うたびお母さんの後ろに隠れるような人見知りでした。
しかし、それではひとりになってしまいました。私は人見知りでも、ひとりになるのは嫌だった。
幼いころのわたしは自分の力だけでなにもできなかったから。
だから、頑張った。今まで話しかけられて、返すだけだったけど、自分から話しかけにいった。
そしたら、いつの間にかこうなっていた 」

「 結局、なにがいいたいの?俺はむかしのわたしみたいだからかわってほしいってこと? 」

「 はじめはそう思っていました。でも先輩はむかしのわたしにはない強さをもっていた。
ひとりで生きる強さを。たしかに不器用で他人より劣っていることも多いかもしれない。
それでも、先輩はひとりでやる。だれかに救いを求めず、おのれのちからのみで…… 」

「 そのことに気づいたとき、私は先輩をすきになっていた。私がむかし切り捨てたものを
もって生きている強い人に憧れたんです。あのとき、わたしは孤独からにげた。
でも、きっとわたしのなりたい人物像は孤独を乗り越えた先にある
ーー先輩みたいな人ーーだったんです 」

「………… 」

「でも、ひとりでなんでもこなせるわけじゃありません。いつか孤独がつらいと感じることも
あると思います。
だから、そのときにわたしは先輩に真っ先に頼られたい。ちからを貸したい。
いつも先輩がつらいときに、側で支えてあげたい。元気づけてあげたい。
もし、どうしようもなくつらいことがあったら、わたしが抱きしめて全力で癒してあげたい。
もし、悩んでいることがあったら、わたしが一緒に悩んであげたい。
楽しいことがあったら先輩といっしょに共有したい 」

「 ーーどうして……そこまで 」

「 だって、わたしは……先輩のことがすきだから 」

「 俺みたいな人でも? 」

「 先輩だからいいんです 」

「 俺はおまえの思っているような人じゃないかもしれないぞ 」

「 1年間あなたをみてきたわたしがいうんだから大丈夫です 」

「 ーー (ヒロインの名前) 」

「 はい 」

「 俺は、あいかわらず人と関わりたくない。傷つけるのも、傷つくのも嫌だ 」

「 はい 」

「 これからも俺は変わらずひとりでいることも多いと思う 」

「 わかってます 」

「 それでも、つらいとき、怖いとき、苦しいとき、そばにだれもいないのはつらい。

ーーだから、おまえみたいなやつがひとりくらいそばにいてもいいと思う 」

「ーー先輩!!!! 」

「 ちょーー苦しい!!急に抱きつくな、うざったい 」

「 うざいなら離れればいいじゃないですか。先輩! 」

「 ううーーーーーーーーーーーーーー!! !! 」




chapter.3 幸福

 

チュン チュン

まぶしい日差しが窓から差し込み、部屋を照らす。

庭に植えてある  ーの木の匂いが風にゆられ鼻腔を刺激した。

私はそこで、目が覚める。

「もう……朝か。」

重たいまぶたをこすりながら、起床する。

横にはまだ安眠しているご主人がいる。

私は身体をぺろぺろと舐め、毛を整える。

この朝のモーニングルーティーンは野良のころから毎日欠かさずこなす。

 

さてと……

ほーら起きてーご主人〜。

「ニャーニャニャニャ」

「…あと5分だけ……」

もう、だらしないなー

 

私は物心ついたときから野良猫で、今まで人間の家に泊まったりしたことなんて

一度もなかった。冷たい風に体温を奪われながら、公園のベンチ下で眠る。それが私の日課

少しでも運が悪ければ永眠している。それが当たり前でいつ来るかわからない死に、

身体を震わせながら起床する。

しかし、初めての家中泊。今までの暮らしがバカに思えてくる快適さ。

私たち野良は眠るのも命がけなのに人間は寒さをしのぐ民家で眠る。

つくづく人間に嫉妬する。私たちと住む世界がちがうのはわかっている。

しかし、嫉妬せずにはいられない。

 

だって、理不尽じゃないか!!

 

こんなあたたかい日差しに包まれ起床したのに、

心はすっかり冷め切ってしまった。

 

「…大丈夫だよ 私がそばにいるから 」

「!?」

……なんだ寝言か

となりには幸せそうに眠っているご主人の姿があった。

 

私は人間を信じれずにいる。

人間は自分勝手な生き物で、気にくわないことがあったらすぐに私たちを捨てる。

野良猫はほとんどが人間の都合で捨てられた。

そんな現実を知ったとき私は人間に失望した。

自分勝手な都合で猫を飼い、都合が悪くなれば捨てる。それが人間の本質。

 

このご主人もきっとそう…いつか私を捨てるにきまってる。

 

私は階段を降りて一階に行く。

とん とん  とん とん 

階段をおり、きらびやかに装飾された長い廊下を渡る。

 

「ジューーー」

料理をしている音とともに美味しそうな匂いがしてきた。

どうやら、朝ごはんを作っているみたいだ。

……朝ごはん。私はいままで朝ごはんなんて食べない派だったから、

朝ごはんなんて食べる奴は、よっぽど裕福な暮らしをしている豪族、貴族くらいにおもっていたけど……。

そうだった このうち豪邸だった!!!

そりゃ朝ごはんといわず昼も夜も食うわなー。

 にくいね〜カネモチ!!!

 

「あ……起きたのルフナ!!おはよう

   ところでリリーはまだ寝ているのかしら?ちょっとおこしてこないと…」

 

「いえ、お母様私が行きますから」

 

「大丈夫よレイ。あなた料理中だし、たまには娘の寝顔もみたいもの」

 

「……すいません。ではお言葉に甘えさせていただきます」

 

  スタ スタ スタ

 

  お母様はご主人を起こしにいったみたいだ。

 

それより朝ごはんかーー私の分はあるのだろうか!?

 

「はぁ?お前の分なんてあるわけないだろ!!

    雑種はそこらへんの草でも食ってな!! !  」

 

なんて言われたらどうしよう。

猫は肉食だから草なんて食うかーー!!!

って思ってたけどこの際食べます?……雑草。

いざとなったら検討してみよう。

それは最終手段になりそうだな。

 

「おー美味しそうなごはんだな〜」

見知らぬ男がきた。

昨日みたときはいなかったぞ

……まさか不審者!?

この家こんな立派な見た目して警備が

ゆるゆる過ぎないか?

…まぁいい

私のシャトーに侵入するとはいい度胸ね。

二度とこの家に近づけないようにここで

痛めつけてあげないと…

ええい!!!

何処の馬の骨ともしれぬ不届き者よ!!

即刻立ち去るがいい!!!

 

「シャーーー」

 

しっぽを逆立て、鬼の形相で睨みつける。

 

「この猫が昨日いっていたルフナかーー。

   なんかめちゃくちゃ嫌われてるんだけど僕……」

 

「ルフナはまだ来たばかりで警戒しているんでしょうね」

 

聞き覚えのある声が後ろから聞こえた。

後ろを振り返ると嬉しそうなお母様と目をこすっているご主人の姿があった。

 

「 ねえおとうさーんこの子かわいいでしょ。

   特にこの綺麗な目!!   」

 

「…ほんとだ綺麗な瞳だな。」

 

ふふん〜褒めったってなにもでやしないわよ〜

……ん?

オトウサン?

お、倒産?

お豆腐さん?

この人……ご主人のお父様!?

たしかにいわれてみれば、顔つきがご主人に似てなくもない。

まあとりあえず冤罪だった。

いやーよかった。よかった。

私の新しいアジトが不審者に奪われるかと思ったからつい警戒しちゃって。

 

「皆様 朝食の準備ができました」

レイと呼ばれるメイドさんが朝ごはんを食卓に並べる。

 

「はい…どうぞ」

わーー朝ごはん!!!!

これが朝ごはん!!!

私…朝ごはんデビューしちゃっていいの!?

 

『いただきます』

 

うんめーー

むしゃくしゃ…こんな、むしゃくしゃ…うまい、くちゃくちゃ、ごはん

初めて、くちゃ 、食べたーーーー!!!!

 

『ごちそうさまでした』

 

食事が終わると綺麗に平らげた皿をメイドが回収していく。

 

ふーーお腹いっぱい!!!

もう動けないわ。

 

「ルフーーーナーーー!!!!」

 

「げっっっっっふ」

ご主人の たいあたり こうかはばつぐんだ!!!!

から〜の〜ハグーーーーー!!!

 

ちょ、ギブ、ギブ…ほんと苦しい。

「ニャーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」

私のサイレンに似た悲鳴は虚しく

苦しみはとまらない。

だめだ……もうおちる

私はデジャブを感じながら意識を失った。

 

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童貞道

二次元ではよく、ひとつの作品には、一人の推しじゃないといけない
みたいな風潮があり、また、それを自分の“嫁”と呼んだりするが、
三次元でも同様に不倫、浮気はいけないなど一妻多夫や、一夫多妻を否定する風潮がある。
しかしそれはおかしい。結局恋心は性欲をごまかすためのもので、俗に言う”好きなタイプ“
は自分の性的興奮を高めるものにすぎない。
ならば、ほんとうに批判すべきは不倫、浮気をする恋人ではなく、
性欲の強い恋人に対してではないだろうか?
むしろ相手の性欲を満たせてない奴がわるいともいえる。
なににしろ、恋は性欲からくるものならば、不倫、浮気も性欲からくるものである。
そして、多数の人を好きになるのは当たり前のことなのだ。
だから、好きな人を二次元の推しや嫁を一人に決めなければいけないという風潮はおかしい
のではないだろうか。

chapter.1 出会い

私は瞳を閉じた。

夏の熱風が私の身体を撫でる。

セミがミンミンとやかましく騒いでいる。

夏の中旬を迎えた今、気温はますます上昇する。

ほおを流れる汗を拭い、思い出す。

私が幼い頃の過去の思い出を  

ーあのときもこんな天気だったな。

うんざりするような日差しに身を包まれ、

私は過去を思い返した。

 

 

*   *   *

 

 

吾輩は猫である

名前はまだない。

 

ただの飢餓状態の野良猫だ。

ああーお腹すいたなぁー。

今日も何も食えなかった……。

 

まぶしい夏の日差しがアスファルトにうちつき、

嫌になるような、熱風を放っていた。

私はなるべく、日陰になる場所を歩き

体力を奪われないようにした。

 

すると、

横からトラックが走ってきた。

あっ……。

これ……死んだな。

不思議と自分は落ち着いていた。

きっと私はトラックが来なくても

数時間後には餓死していたと思うから。

死期が少し早くなっただけ。

それなら、苦しみもがいて死ぬより

楽にいける気がする。

私はそっと目をつむる。

トラックの近づいてくる音が徐々に大きくなり、

私の死が目前に迫っているのを感じた。

 

私はここで死ぬのだ。

思い返せば満足にご飯もたべれない。

彼氏もできない。

おまけに馬糞の匂いが充満した馬小屋で寝泊まり。

ああ。私の人生ってなんだったんだろう。

 

タッタッタッタッタ

 

すると私の後方から、もう一つの何かが近づいてくる音が聞こえてきた。

それが何か気になっていると、後ろからだれかに

抱き抱えられる感覚が神経を通じて伝わる。

不思議に思い、私は恐る恐る目を開いた。

そして目の前にいたのは一人の少女だった。

背は小さめで、ふりふりな白いワンピースを着こなした少女。

黒く、艶びかりする髪は麦わら帽子で隠れて、影になっている。

彼女はさっきまで死のうとしていた私のことなんか

しったこっちゃなく、私を強く抱きしめはなさなかった。

 

気がつくと、目前まで迫っていたトラックの姿はなかった。

かわりに息の切れた少女がそこにはいた。

 

「ぜぇーはぁーぜぇーはぁー

   ……こんなに走ったのひさしぶり

   ……大丈夫、君?轢かれそうになっていたけど。」

私は首をたてにふった。

 

「そう。ならよかった。」

「君歩ける?」

 

首をよこにふった。

「そう……ならちょっと待っててね。」

そういうと少女は小走りに走っていった。

 

「たすけられた」

 

私は死を覚悟していた。

それなのに人間にたすけられた。

死を先延ばしにした。

こんなことしても後数時間で死ぬのに。

……ああなんか

       意識が朦朧としてきた。

 

「ちょっと…少し…ねむる」

そういって私は道路沿いに倒れた。

 

 

 

目を覚ますと、見知らぬ天井。

ああここが天国か。

我ながらしょうもない人生いや、猫生だった。

ん?天井?

ってかここどこだ?

私もしかして死んでない。

 

「あっ…猫ちゃん起きたー」

 

ー ハグされた。

 

ちょっとまって苦しい苦しい

ギブ…ギブ…ギブアップ!!!!

「ニャー!!!」

「あっ……ごめん苦しかったよね」

そういうと少女は手を離した。

 

「命に別状はありませんが酷い飢餓状態に陥っています。

  しかし、十分な食事を用意すればすぐに 回復するでしょう。」

 

「ありがとうございます。先生」

 

「いえいえ」

 

ああ、ここ動物病院か。

ってことは私はまたこの少女にたすけてもらったのか。

 

「でもこの子野良猫なんですよね……。

  しかもこんなに小さい 。  このまま放っておいたら 

  また、倒れちゃう。

  ……そうだ!!私この子…飼います。 この子のお世話は私がします。」

 

「でも……ご家族とよく相談してからー」

 

「両親はきっと許してくれます。

  うち裕福だし、お金も大丈夫です。」

 

「分かりました。とはいえ もし、ご両親に相談して

   ダメだった場合、こちらに連絡してください。」

 

  そういって先生は施設の名前と連絡先が書いた紙を少女に渡した。

 

「はい……先生。ありがとうございました。」

 

 

 少女は病院を出る。

 彼女は私を見ながらほほ笑んだ。

 その笑顔は年相応にしおらしく、すこし儚さを感じ取れる笑みを私に向けた。

 私は数年経った今でもあの笑顔が忘れられない。

 

 

chapter.1    初めての出会い

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chapter.2 家族

 

スッゲェーーーー。

私は彼女の家にやってきた。

しかし、まあ…まさか、彼女が金持ちのお嬢ちゃんだったとは。

そりゃ…お金は大丈夫だわ。

とはいえ、

……え?もしかしてこんないい家住んでいいんすか?

私ずっと野良やらせていただいてるんですけど。いいんすかね!!

処女も卒業していない私に、野良卒業していいんですかね?

いやいや、落ち着け。そうcoolに。

まだご両親の許可をいただいてない。

ここに住めるかどうかは私の面接態度次第ってわけだ。

はっはっはっはー!!!

上等だ!みるがいい。私の野良として鍛えぬかれたこの胸筋や背筋。そして

生まれ持ってあるこの美貌。

私は自慢じゃないが、野良時代にいくつもの男たちに告白されたわ。

まぁどいつも私にふさわしい男なんていなくてお断りしたけどね。

えっ?何人に告白されたかって?そりゃ…ふた…っっつ仕方ないでしょ!!

ゆうて私今1歳だし、物心ついて間もないし…人間の年齢では18でも

モテてるほうだと思いませんか?思いますよね?

はー。なにやってんだ私。

まぁいいわ。ともかく私の凄さが読者に伝わったところで、

そろそろ行くみたいね。

 

 

「はぁーなんか緊張するなー。もし飼ってくれなかったらどうしよう……。」

 

あら?

どうやらご主人緊張しているみたいね。

ほ〜ら元気だしなさい。

あなたがそんなんだと

私も緊張してくるでしょ!

私は少女のふくらはぎに顔を埋めスリスリした。

「……猫ちゃん。」

彼女は嬉しそうに頭をさげた。

「よし、行くか!!」

どうやら決心がついたらしい。

私も気合をいれ前を向く。

 

……よし、いざ--参る!!!!

 

3メートルくらいある大きな扉を開け、

私たちはお家の中に入った。

な、なんか スゲェーーー!!

私は一応家の中に入るのは初めてではない。

だから、人間の住処がどんなものかだいたい知っていた。

だけど--なにこれー!?

こんなのみたことナイヨ!!

入り口の時点ですでにおかしかったけど

内装もおかしいしてる〜〜!!

まず、玄関!!

こちら大理石でーーす。

そしてめちゃひろい!!

鰹節1000枚くらいひきつめられるわ(3畳)!!

続いて、廊下めちゃながーーい。さきが暗闇になっとるがな!!

まっくろくろすけでちゃうがな!!

しかもね、壁になにやら色々飾ってんの!!

これ私しってる。映えってやつでしょーー!!(違います)

最近では絵画を壁に貼るのが映えなのかな?

ってか壁金色なんよね!!もう意味わからん。

こんな家あったんだこの街に!!

世界は広かった。

色々驚いているところに、

誰かが暗闇の先から出てきた。

「お帰りなさいませお嬢様」

「うん。おかえりレイ。  お母さんいまいる〜?」

レイと呼ばれた女は黒白を基調としたフリフリなメイド服を着ていた。

「ええ。お母様は食堂でお茶を嗜んでいます。

   ……ところでそちらの子猫は?」

「ああ。この子さっき道で拾ったの。

   レイ。私、この子飼いたい。」

「……とりあえず、お母様に相談してみましょう。」

「うん。」

「おかあーさーん」

「あら、リリーおかえり。」

 

「お母さん…いや、お母様。私、この子を飼いたいんです。」

「世話はちゃんとできるの?」

「できます。」

「毎日面倒見れる?」

「もちろん」

「 お世話は私がします。勝手なのは十分分かっています。

   でも……   それでも、私はこの子の居場所をつくりたいんです!!!!」

「あなたの気持ちはよくわかったわリリー。

    …  いいわ。その子は今日から新しい家族ね!!」

「やったー!!——ありがとうお母さん!!!」

   ぎゅーーーと力強く抱きしめ合う親子。

    なんとも胸が温かくなる光景。

    私の心臓がトクトクないている。

「よろしくね猫ちゃん。」

「ニャーー」

「ところでこの子の名前はどうするの?」

「ふふーーん  聞いてお母さん!!

   私、いい名前思いついちゃったの!!」

「どんな名前?」

「レイさん、ルフナ茶お願い!!」

「かしこまりました。お嬢様。」

「この子の名前ルフナにする。」

「……ルフナ。うん。いい名前ね。ルフナもきっと喜ぶわ!」

「うん」

 ルフナねぇ、ルフナ……うん。

いい名前。すごい気に入った!!

 

…ところで私、今回何もしてなくね……?

 

 

  

    

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は、カッコいい。これは自己愛性パーソナリティ障害とか、ナルシストでもなく、客観的に

判断してだ。

頭脳明晰、身体能力バツグン、顔もかなり整っている。故に後輩からも好かれる。女に告白されたことも数えきれないほどあった。

俺はみんなからの憧れで、尊敬の眼差しだった。

これは中学2年生までのはなしである。

 

なのに……。

どうして、どうしてこうなった!!!!

 

現在

• 無職

• 引きこもり

• 友達0人

• ブサイク

•オタク

 

 

 *   *   *

「あれ?なんか人間界にめちゃくちゃステータスぶっんでる奴いね?」

「あ……。ほんとだ!!いる。」

「誰だよあんなやつ作ったの?儂しらんよ。人間界なんてFにとられてから、あの星に

   手だしてないもん。」

「じゃあ誰がやったの?」

「どうせあのFの仕業じゃろ。そもそも人間界の管理はあいつの仕事じゃ。どんなことがあったにしろ

   それはFの責任じゃ。」

「でもあの力エグくね?あれだったら最下層の地龍とおんなじくらいのステータスあるんじゃね?」

「……。とはいえ儂らが、他の管理者の星に干渉するのは認められておらん。

   ここはやはり女神サリエル様に報告せねば。」

 

    シュンと音をたててじじいは消えた。

   

    ーーシュン

「 どうしたのドレイン?そんなに慌てて?」

「人間界に強力な力をまとった少年がいます。名を五条悟。彼は人間歴で14歳にして、

    地龍と引けを取らない存在。奴を野放しにすれば世界のバランスに支障がでるやもしれません。」

 「ッチ……。Fめ。あいつ最近私のもとに姿を現さないと思ったら……。

    はぁ〜きっとそいつは虎子ね……。いやーそれにしても強すぎる。

     絶対なにかFが関与している。

     ボソッ …… あいつも私を裏切るのね。

     レノア。12神ここに呼んで、緊急柱神会議始めるから。

「分かりましたサリエル様」

「   ……とりあえずその子殺さないとね。」

     

 

  *   *    *

 かの有名なスティージョブズはいった。

  「重要なことに集中する唯一の方法は『No』ということだ。」と

  俺はそんなことに気づかず生きている人間は愚かだなと思う。

  一度きりの人生で勝ち組に生まれてきた俺がいうんだから間違いない。

「おにーちゃん。また告白断ったんだって?」

「だって俺は、恋愛感情が分からないだよ。結局恋愛なんてものは

    性欲をごまかしているだけにすぎない。」

 「おにーちゃんって完璧ってよくいわれるけど恋愛に関してはゴミだよね。」

 「はぁ?なんで?」

 「無自覚……。まぁ……おにーちゃんくらい完璧だと、むしろそのくらいが普通なのかもね。」

 「普通ねぇ。ミキは誰かを好きになったことあるの?」

 「さあ〜どうかな〜あるかもしれないし、ないかもしれないし」

 「なんだそれ?」

 「ねぇ……おにーちゃん。もし誰かを好きになったら、真っ先に、一番最初に私に教えてほしい。」

 「そんなときがくるとは思えないけど。」

 「約束だよ。」

 「ん?……ああ約束だ。」

 

 

 *   *   *

 なあ〜なんでこんなことになっているの?信じらんない!!もうや〜だ!!引きこもりや〜だ〜

 神様……俺なんか悪いことした?全く身に覚えがありませんがゆるしてください!!!!

 死ぬよりも辛いことがあるって聞いたことあるけど、本当死んだほうがよくね。

 まさかこんな身体になるとかまじないわ〜人生のゲーム難易度狂った!!

 エリートスーパー社会人への、エスカレーターコースが、血の池地獄行き、真っ逆さまコースに

 シフトチェンジしてしまった。

『クソッタレ!!!俺をこんな身体にした奴ぜってぇゆるさねぇ!!』

 いまならぜったいかめはめ波うてるわ!!怒り通り越してスーパーサイヤ人なれ                   

 るわ。        

          

     ピンポーン 

 

あぁん?だれだよこんな時に!!はぁ〜……はいはい今出ますから……

「宅配便で〜す」

「あっ……はい……。」

 あれ?なんか声がでにくい?っていうかなんか今身体の動きが止まった?

 それにドクドクなってる。

 まっ……さかね〜。さすがに無職、引きこもり、ブスになったのに

 これ以上何を失うっていうの〜。

  ちょっと久しぶりに人と話して緊張しているだけだし、前世で緊張したことないけど……。

「月城様宛でお間違いないでしょうか?」

  月城?ああ今の俺の名前ね。

 「あっ……hっはい。」

「ここにハンコお願いしまーす。」

     

とん

   

「はい。ありがとございましたー。」

ガシャ

ちょっとまって!!!初めてめちゃくちゃドキドキした!!。

これはいくらなでもおかしい。

前世のころはあんな緊張したこと一度もなかった。なのにこの身体になって初めて人とあって、

そんな……まさかそんなことが……。認めたくなかった。

 そんな残酷な真実なんてあんまりじゃないか?

 いや……もう認めよう。この際一個や二個ダメなところ増えたって変わらない。

 俺は初めて恋を経験した!!この今までに経験したことない脈を打つ速さ、話そうとすると、

言葉がのどにつっかかってでてこない感じ。そして、全身が緊張して動けなくなる。

どれも俺には初めての経験だった。さらにそれだけじゃない。ある事実が発覚した。

 

そうだ……俺はゲイだった。存分に笑うがいい読者の諸君。元スーパー完璧イケメンの俺が

気がついたらブサイク、無職、ひきこもりになってさらにゲイだと発覚したんだから。

良かったな!!これで満足か!こんちくしょーが!!!

     

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次回  ゲイでも愛してくれますか?

墓参り

 

今日はおじいちゃんの墓参りだ。

おじいちゃんは僕が物心ついたときから、一緒にあそんでくれた。

昔から友達のいない僕は、おじいちゃんだけが僕のあそび相手だった。

そんなおじいちゃんが亡くなってもう2年。

最初は彼の死を受け止められず、茫然としていたが、2年も経てばさすがに落ち着く。

きっとおじいちゃんは、いつまでも自分の死をひきずってほしいなんて

思わないだろう。

だから、僕はあれから努力し、友達をつくったのだ。これでおじいちゃんも安心して

天国に行けるはずだ。

 

 

「おや、また誰かきたな……」

「な、な、なんかでたーーーーーーーーーーーーーーーー!?」

「なんか、とは失礼な!!幽霊じゃ!!」

「幽霊って実在したの!?」

「もちろんじゃ!」

「でも、なんで僕だけみえるんでしょうか?」

「考えられるとしたら、死期が近いからじゃの。」

「えぇぇぇぇ!?」

「死期が近い人間は霊に近づいている影響で、霊が見えるんじゃ。

   逆にそれ以外のものには見ることはできん。」

「えェェーー!?」

「じゃぁーオカルト番組とかで映っているやつはー」

「あれは全部嘘じゃ!!」

「16年間生きてきて一番の驚き!!!!」

「なんや、おぬしなかなか良いリアクションをするではないか。

   この身体になっても、とくにやることもなく暇だからのー」

「人のリアクションを暇つぶしに使わないでください!!!」

「ところで……。おぬしくらい素直な子なら『サンタさん』とか信じてたんじゃないか?」

「え…?……サンタさんはいますよ?」

「…え?」

「なんならプレゼントももらいます。」

「はぁ!?」

「この間貰ったプレゼントは借金取り立て書とか書いてある紙をもらいました。」

「いや…それ借金じゃよ!!!親、借金してるよ!!!」

「サンタさんはシャイだから基本的には合ってくれないんです。……でも最近は

   サンタさんはうちのドアを勢いよく叩いてたまに合ってくれるんです。」

「いや金取りにきてんじゃよ!!!」

「でも母がサンタさんに何か渡すと、サンタさんは笑顔で帰って行きました。」

「絶対、それお金の返済じゃ〜!!」

「じゃあー『トナカイ』はどうなんだじゃ?」

「ああ、彼とは仲良くやってますよ。……先日も、銃で殺し合いをしました。」

「ええ!?トナカイと!?ってかトナカイも銃使えるのか?」

「ええ。しかし、彼はまだ初心者で、私が一方的に虐殺しました。」

「トナカイーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」

「しかし最近になって、ようやく腕をあげて、今や私も、三回に一回はやられます。」

「いや。おばけより不死身の人たちここにいる〜〜〜〜〜〜〜!!!」

「やっぱり、レベル上げを怠ったせいでしょう。」

「ん?れべる?ああ……もしかしてゲームの話かの?」

「ん?そうですが……。」

「そ…そうじゃな…流石にトナカイが人と殺しあうとか怖すぎーーー

   

 ちょっとまって!?

  FPSゲームできるトナカイって何?

  殺し合いってパンチワードに気をとられたけど、

  コントローラーあつかうトナカイってめちゃくちゃ

天才!!!

その光景を録画してYouTubeに流せば一気に有名になれる!!!

そうと決まれば今すぐにでも連絡をとって……。

(あせってじじい口調忘れた……。)

 

 

「小僧…トナカイとやらに連絡とれないかの?」

「できますけど…なんで急に?」

「いいから……。」

「分かりました。」

   ぷるるるる ……ぷるるるる……ぷるるるるお掛けになった電話番号はー

「だめだ。やっぱり仕事中です。」

「仕事?だがそこをなんとか……」

「無理ですよ。彼も人ですから。」

「…………………………え???」

「トナカイって人間なのか?」

「当たり前でしょ。何寝ぼけてるんですか?

   隣(トナ)の海(カイ)さん略してトナカイです!!」

「なにややこしすぎる名前に略してんじゃあぁぁ!!!儂はてっきり本当にトナカイがー

  ……じゃあサンタさんはどうなんじゃ?」

「ああ彼は借金取り立ての三太(サンタ)さんです。」

「またややこしい名前のキターーー!!!」

「あれ〜?おっかしい〜なぁ?なんでそんなこと聞くんですか?

   あーーひょっとして”サンタクロース”がいるとか信じてるひとですか?」

ぐぬぬ…。」

「 フィクションは本だけにしとけよ〜〜」

「うぜぇぇぇぇーー

   ーまさか儂が小僧にやりかえされるとは……。」

「やられたらやり返す倍返しだ!!!」

「小僧〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!」

  そういってじじいはじょうぶつしていった。